
ぶるっ。冷えるね、なぁんて言ってらんねぇのが浅草の年の暮れ。「師も走る」とはよく言ったもの、新年を迎える準備で大忙しだ。「市」ってのは、神社仏閣のご縁日に日用品を商うための店を出していたんだが、「歳の市」はその歳の最後の市。正月飾りに鮭や餅、遊び道具までずらり取り揃える中で、歌舞伎の人気の高まりとともに、羽子板が多く売られるようになった、というのが羽子板市の始まりってわけ。方々で歳の市は立っていたが、なんてったって浅草観音の市が大江戸一番の賑わいを見せていたね。
一年の終わりの大晦日、貸し借りなしのスッキリした気分で新しい年を迎えたいもんだが、文字通りツケが回ってくる輩(やから)もいる。江戸の商いは盆暮勘定といって、普段はツケで買い物をし、盆と暮れの年に2回、たまったツケを支払うわけだ。半年分といったら払う方も取る方も大変。借りた方は「ねぇ袖は振れねぇ」なんて居直りやがるから、大晦日の深夜まで取立て合戦が繰り広げられる。挙げ句の果てには夜逃げときたもんだ。めでたく支払いが済めば、すがすがしく元旦の朝を迎えられるんだがね。
大晦日には、仕事が終わると宵のうちに生まれた土地の守り神である産土神(うぶすながみ)にお参りする。これが除夜詣(じょやもうで)で、仕事着姿の綿ぞっき(綿の服。いわば普段着)でお参りしたが、一夜明けた新年にはお蚕ぞっき(絹の服。晴れ着)で初詣。気分一新ってわけだ。昔は、元旦未明にその年の福徳をつかさどる歳徳神(さいとくじん、としとくじん)がやってくる方角にある神社仏閣へ参詣した。これを恵方(えほう)参り、といって現在の初詣の原型になっている。願いを叶える祈祷寺院へも参詣したが、その代表的なのが七福神めぐりだな。
元旦は仕事は休みだが、年始回りで町方は大家や親方に、武家は上司に新年のご挨拶にうかがう。二日には仕事初めの新春大売出しだ。この日の夜に見るのが「一富士、二鷹、三茄子」でおなじみの初夢。枕の下に七福神や宝船の描かれた「お宝」を敷いてその年の吉兆を占うわけだ。めでたい夢を見たいもんだね。
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